リスティング広告
2024.12.25
拡張CPCがなくなった…自動化の波に抗う
目次
拡張CPCがなくなってしまう
Google広告の入札戦略の一つである拡張クリック単価(以下、拡張CPC)が、2024年10月から新たに設定できなくなることが発表されました。
さらに、2025年3月には完全に廃止される予定です。
9月6日頃から、上記のような通知が 拡張CPCを利用している世界中のアカウントに届いている。
まだ、自動化の波がこんなにも如実に表れていない頃、
手動でありながら、予測コンバージョン率に応じて入札の幅を持たせてくれる『ソフト自動化』な感じが好きだった。
昨年(2023年)にショッピング広告で利用できなくなったり、もっと前(2021年)にもポートフォリオ入札で使えなくなったりと、徐々に廃止に向かって進んでいることは、うすうす感じていた。
それでも、実際に廃止になることが決定されるとなると、うわっ、どうしよう…という感じなのです。
なくなるまでの流れと、対応
拡張CPC 廃止までのスケジュール
告知メールには、配信までのスケジュールと対応が次のように書かれている。
・2024年10月
新しいキャンペーン(検索・ディスプレイ)で拡張CPC が選択不可になる。
※既存の設定は2025年3月までそのまま利用可能。
・2025年 3月
拡張CPC を利用しているキャンペーンは個別CPC へ自動的に移行。
※ディスプレイ広告の入札戦略が「クリック数の最大化」で拡張CPC が有効になっている場合も、そのままクリック数の最大化が継続される。
・必要な対応
コンバージョンをトラッキングされている場合は、設定されている目標に応じて「コンバージョン数の最大化」または「コンバージョン値の最大化」に切り替えることをおすすめします。
コンバージョンをトラッキングされておらず、コンバージョン数またはコンバージョン値に基づく目標を設定されていない場合は、「クリック数の最大化」の使用をご検討ください。
※Google Adsからのメールより抜粋
つまり、この機会を利用して、すべての入札戦略を自動入札に移行せよ、というメッセージなのです。
Google はできるかぎりすべての入札を自動へと切り替えたいがために拡張CPC を廃止するわけなので、Googleにとっては、この説明は至極妥当な説明と言えるでしょう。
Google広告の思惑
Google広告を使用していると、以下のような状況に遭遇することがあるかもしれません。
- デフォルトが自動入札になっている
- 新規設定時に個別(手動)入札が選択しにくい位置に隠されている
- ある程度予算やコンバージョン数が確保できているキャンペーンで繰り返し自動入札への変更を提案される(管理画面上で)
- ある程度予算やコンバージョン数が確保できているキャンペーンで繰り返し自動入札への変更を提案される(Google広告の担当から)
つまり、言われたとおり設定していた場合、ほとんどのアカウントは自動入札に誘導されているはずです。
現在も拡張CPC を使用しているキャンペーンの多くは「意図的に」それを選び、同時に「意図的に」自動入札を選んでいない。
だとすれば「自動入札にしろ」という自動入札への誘導には、抗いたくなるものだ。
だってこちらはわざわざ選んでいないんだから。
自動入札は、ある意味すばらしい。
自動入札は特定の条件下ではすばらしいと思う。
人間が感知できない多種多様なシグナルと、それらを自動的に判別して入札にフィードバックするシステムは、本当に素晴らしいと思う。
わたし自身、自動入札を使用しているアカウントはかなり多い。
実際に、自動入札していたキャンペーンを手動に戻し配信してみたことがある。
キーワードの拡張され方の違い。またその時のクリック単価。
人間が感知できない多種多様なシグナルには勝てないと思い知らされた。
運用者としては受け入れがたいが、より良いアカウント運用のためには、自動入札に任せないと未来はないと痛感した。
指名キーワードのクリック単価の高騰を嘆く。
だが、それと同時に、昨今の指名キーワードのクリック単価の高騰は、自動入札の副産物であるといっても過言ではない。
自社名やオリジナルブランドのキャンペーンは、ダブルブランドやリセラーじゃないかぎり容易に高い広告品質・ CVR を出すことができる。
こういったいわゆる「指名キャンペーン」の場合、目標CPA のような予測CVR から逆算して上限クリック単価 を決めていくタイプの自動入札は、高い品質によって相対的にクリック単価を安価に抑えられるはずにもかかわらず、自動入札が品質や予測CVR の高さを理由にして高いクリック単価で入札しやすくなり、結果的にオークションプレッシャーの影響を受けやすく、平均クリック単価 が高騰しやすくなってしまう。
実際に、現在でも拡張クリック単価を使用しているアカウントでは、指名キーワードのクリック単価は10円以下だったりもする(これは言い過ぎかもしれないが)
自動入札しているアカウントの指名キーワードのクリック単価は、300円越えというのもざらにあるではないか。
この図から考えて、自動入札ではどうしてもクリック単価が高くなりがちなのである。
もっとも長い間 愛された入札戦略だ。
拡張CPC は考慮するシグナルが限られているし、自動入札全盛の現代ではなんだか中途半端な存在に見えがちだ。実際にヘルプを読んでもそういう書き方になっている。
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拡張クリック単価は、個別クリック単価設定で使用できるスマート自動入札の一種であり、ブラウザ、地域、時間帯などのオークションごとのさまざまなシグナルを使用して、検索ごとの固有のコンテキストに合わせて入札単価を設定します。しかし、目標コンバージョン単価や目標広告費用対効果などのその他のスマート自動入札戦略と比較すると、コンテキストの範囲は限られます。
拡張クリック単価(eCPC)について – Google 広告 ヘルプ
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だが、拡張クリック単価 は初登場が2010年8月なので、かなり古参の機能だといえる。
当時は自動入札の本命として登場し、多くの広告主から疑いの目を向けられながらも、急速に広まっていった。
現在の自動入札の基本である「コンバージョン数の最大化」が登場したのは2017年なので、ずいぶん古参ということになる。
もちろん、拡張クリック単価 が誕生する以前にも、現在の目標CPA の前身である「コンバージョンオプティマイザー(CO)」という入札戦略は存在した。
ただ、この CO は設計も機械学習のレベルも今とはまったく違うシロモノだったので、実際の現場ではほとんど使われていなかった。
そんなわけで、とにかく初期の自動入札はとても胸を張ってオススメできるレベルではなかった。
入札をいきなりシステムに握らせるのは機能的にもクライアント理解してもらうにもむずかしかった。
そこで最初から全自動にするのではなく、既存の上限クリック単価に対してオークションごとの予測コンバージョン率に応じた入札の幅をもたせる仕様となった。
これが現在の拡張クリック単価 である。
当時はインプレッションの半分程度とか、振れ幅は上限クリック単価の +30% 程度とかいろいろあった。
だが、これらは上限クリック単価の付近で平均クリック単価を何とか収めるための仕様だったと考えられる。
その後は機械学習が大きく発展し、自動入札が「コンバージョン数の最大化」をベースに精度を高めてくるにしたがって、拡張クリック単価 にもマイナーチェンジが加えられながら現在に至っているのだった。
こうして振り返ってみると、拡張クリック単価 は 初登場の2010年から数えると実に14年という間、運用者に愛され続けた入札戦略だと言えないだろうか。
自動入札の「自動」って…
自動入札の「自動」という言葉にはどうしても「機械にお任せでほったらかし」とう雰囲気が漂ってしまう。
クライアントから見ると、何もしてくれない感があるような気がする。
うまくコンバージョンが取れている時はいいのだけれど、一度コンバージョンが取れない!という状況になった時には「AIに任せっぱなしで、何をしてたんだ! これから、何をしてくれるんだ!」となってしまう。
もちろん、毎日のチェックはしているし、検索語句のチェックも欠かせない。広告文だって変えているんだ。
けれど、なかなかそこは理解してもらえない。
そういう時に、ある程度平均クリック単価を予測の範囲に収めておきたいけど、厳密に上限を制御したいわけではなく、コンバージョンを考慮して多少は変化をつけてほしい。
そういうちょうど間の「良いとこ取り」をしたい「やってる感を出したい」という欲求に、拡張クリック単価 は見事に応えてくれる入札戦略だった。
Google広告の戦略
自動入札のキャンペーンで検索クエリレポートを見た際に、「何でほとんど同じクエリなのに、片方はクリック単価150円で、もう片方は1,500円なんだ…!?」みたいなことがなかっただろうか?
それは上述の式にあるように、予測CVR を理由に入札をシステムに任せた結果なのだが、仮にそれで見事にコンバージョンしたとしても、こういった疑念は拭えないのではないだろうか。
「そのクエリは、同じクリック単価でも広告表示できたんじゃないか…?」
「本当にそこまで強烈に クリック単価 を引き上げる必要はあったのか?」
もちろんシステム的には引き上げる必要があったんだろう。それが入札をシステムに委ねるということなのだし。
自動入札は予測CVR が上がれば上がるほど、入札時の上限クリック単価 も連動して上がりやすくなる仕組みだ。
実際の クリック単価 はオークションプレッシャーに左右されるので毎回上下するものの、上述の式の構造として、確実に上がりやすくなる。
同じ予算の中で、クリック単価が上がればクリック数が減っていく。また、時間の経過とともに予算内で出せる限界インプレッション数が少なくなっていく。
そして『コンバージョンを取るためにクリック数を増やす→クリック数を増やすためにインプレッション数を増やす』という予算を引き上げる理由が生まれ、広告費は上げざるを得なくなる。
Google の検索広告のクリック単価は2018年あたりから毎年大幅な上昇を継続している。これは自動入札の全面的な採用とほぼ時期が一致している。
こうした調査結果を見てみても、Google は上限クリック単価 によってある程度天井が見えている拡張クリック単価 ではなく、予測CVR からガンガン入札を上げ平均クリック単価 を上げることが可能な自動入札に切り替えていくインセンティブがあるのは間違いないだろう。
もう真正面からはクリック数はそんなに伸びないからだ。
機械学習によってあらゆるインプレッションをマネタイズしていくためには、拡張クリック単価 のような「いいとこどり」できる運用しやすい入札戦略はなるべく排除したかったのだと考えられる。
まとめ
広告プラットフォームとしての Google が、予算の少ない広告主にとっては より一層使いにくくなることは確かだ。
ただでさえ クリック単価 はコロナ前の2倍程度まで上昇していて、さらにコストコントロールはどんどん難しくなる。
もちろん、拡張クリック単価 がなくなっても個別クリック単価を使えばいい。
でもだったら CVR が高ければ クリック単価にも上昇圧力のかかる拡張クリック単価 を継続したほうが Google的にもいいんじゃないか?
便利なものをわざわざ廃止するというのは、廃止によって クリック単価をさらに引き上げやすい自動入札に強引に誘導する意図があると言われても仕方ない。
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決して、押し売りはいたしませんので、お気軽にどうぞ。